肝臓病食のポイント1

肝臓病食は「バランスのよい食事」が基本!

肝臓病の患者さんには高たんぱく・高エネルギー食がよいとされた時代がありました。 これは栄養摂取が不十分なアルコール性肝障害の患者さんを対象としたものであり、B型肝炎やC型肝炎などウイルス性肝障害の患者さんに薦められるべき食事ではありません。

最近の研究報告では、肥満や高脂肪食はむしろC型肝炎による肝障害の進行を早め、肝硬変や肝がんの危険因子になることが明らかになっています。

慢性肝炎や代償期の肝硬変の患者さんは、バランスの取れた食事を適量にとることが原則です。

肝臓病食のポイント2

バランスのよい食事のとりかたは?

そこで参考になるのが、ハーバード大学のウィレット教授が提案するヘルシーフードピラミッドです。

これは、食事と病気の発症との関係を何年にもわたって追跡調査した疫学研究によって、どのような食事をとれば心臓病やがんなどの病気にかからず健康でいられるかを示したものです。ピラミッドの下には多く摂取すべき重要なもの、そして上に行くほど控えたほうがよいものが示されています。

一番重要なポイントは体重に注意して運動を十分にすることです。体重増加、すなわち肥満は心臓病をはじめとするさまざまな病気の危険が高いことが認められています。また、体重の増減はカロリー摂取のバロメーターにもなります。肝臓病でも肥満になると、脂肪肝となり慢性肝炎や肝硬変にも悪い影響を与えます。

そして、料理で気をつけたいポイントが次の4つ。このポイントをうまく取り入れてバランスのよい食事をこころがけましょう。

ヘルシーフードピラミッドの4つのポイント

1 植物性オイルと未精製の穀物をとる

ごま油やオリーブ油などは健康によい植物性オイルです。不飽和脂肪酸を多く含む植物性オイルは悪玉コレステロールのLDLコレステロールを減少させることが証明されています。未精製の全粒穀物にはビタミン類、ミネラル、食物繊維などが豊富に含まれています。未精製の穀物は消化や吸収が遅く、血糖の急激な上昇を防ぎます。進行した肝硬変では、肝臓にグリコーゲンとして糖分を貯えて血糖を調整する力が落ちていますので、食後に高血糖になりやすいのです。ですから、肝臓病食としてもお薦めです。

2 良質のたんぱく質をとる

豆類や野菜、大豆製品、魚類から良質のたんぱく質を適当量とるように心がけましょう。肉類なら鶏を選びましょう。植物性たんぱく質をとる場合には、いろいろなものを組み合わせましょう。たんぱく質の1日の摂取量の目安は体重1kg当たり1.2~1.5gです。体重50kgの人は60~75gとなります。

3 野菜と果物を十分にとる

地元でとれた旬の野菜や果物が体にもよく、おすすめです。食物繊維が豊富な豆類、根菜類、海藻、きのこ類も十分にとりましょう。便通をよくする食物繊維は、腸内細菌をよい細菌叢へと変化させ、腸内からのアンモニアの吸収を抑えます。肝臓が悪くなると、アンモニアの分解力が衰え、血中にアンモニアが貯留するため、脳症となります。その予防の意味でも、食物繊維をとることがすすめられます。

4 アルコールは原則としてとらない

肝臓病の人には飲酒をすすめることはできません。ただし、たまに会合などの乾 杯で少量(ビール一杯など)とる位ならそれ程悪い影響はないでしょう。

細かい栄養素やカロリー計算はなかなかできるものではありません。肥満の人は体重を量りながら毎日の食事の量を調整し、徐々にこのヘルシーフードピラミッドのとりかたに近づけていくことをこころがけてみましょう。

肝臓病食のポイント3

病態が進行した場合は、病態に応じた食事療法を

慢性肝炎や代償期の肝硬変の患者さんは、今ご説明したように特別な食事をとる必要はありません。 しかし非代償期の肝硬変や合併症のある患者さんは病態に応じた食事療法が必要となります。

肝性脳症の場合は血液中のアンモニアが高くなるので、たんぱく質の制限が必要になります。 腹水やむくみが出た場合は塩分を控え、食道静脈瘤の場合は刺激の強いものや硬い食物を避けましょう。 いずれも主治医の先生の指示にしたがって適切な食事療法を行ってください。