感染予防のポイント1

感染経路からわかることは?

平成11年度に厚生省(現厚生労働省)で報告された『透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防マニュアル』では、肝炎ウイルスの感染経路について、「(可能性としての)感染経路」と「現実の感染経路」にわけて書かれています。

可能性としての感染経路

B型肝炎ウイルスの感染経路としては、血液、血液製剤のほか、血液が付着することがある医療器具、カミソリ、歯ブラシ、タオル等などを介しての感染も考えられるので、これらの処理に気をつける。

現実の感染経路

現実の感染経路としては、注射その他の医療行為、あるいは出血を伴う民間療法、刺青および性的接触(異性間、同性間を問わない) 等がある。 これは、血液が直接体内に入る場合や性行為に伴うような密接な接触関係がなければ、B型肝炎ウイルスは感染しないからである。

このように、血液が直接体内に入ったり、性行為を伴うような密接な接触がない限り、肝炎ウイルスはB・C型共に感染しません。 つまり、患者さんや家族が<現実の感染経路>と遭遇しない範囲の生活を送っている限りは、感染を起こす恐れはないのです。

可能性としての感染経路

B型肝炎ウイルスの感染経路としては、血液、血液製剤のほか、血液が付着することがある医療器具、カミソリ、歯ブラシ、タオル等などを介しての感染も考えられるので、これらの処理に気をつける。

感染予防のポイント2

日常生活における感染予防の注意点

感染経路がわかると、感染予防の注意点もみえてきます。肝炎ウイルスキャリアの患者さんが日常生活において注意したいポイントを、厚生省(現厚生労働省)肝炎連絡協議会によるガイドラインを基にまとめてみました。

日常生活における感染予防のポイント

出血したとき

  • 傷、皮膚炎、鼻出血はできるだけ自分で手当てしましょう。
  • 手当てを受ける場合には、他人に血液がつかないように注意しましょう。
  • 血液の付着物はビニール袋などに密封して廃棄(焼却が望ましい)し、廃棄できないものは自分で十分に水洗いしましょう。

日用品の扱い

カミソリ、歯ブラシ、手ぬぐいなどは専用のものを用意しましょう。

供血について

輸血のために供血しないようにしましょう。

乳幼児と接する場合

口移しに食べ物を与えないようにしましょう。

月経の場合

処理を行った後には、手指を流水で十分に水洗いしましょう。

排尿、排便後

排尿、排便後はよく水洗いしましょう。

汚染物等の処置

分泌物などの汚物はただちに便所に捨てるか、密封して廃棄しましょう。可能な場合は焼却するとよいでしょう。

定期検診

医師の指示に基づき、定期的に検査を受けましょう。

以上のポイントを守れば、家庭内で食器を区別したり、入浴の順番を制限したり、トイレの区別をするなどの必要はありません。 握手などの単なる皮膚の接触だけで感染することはないので、理髪店やプールに行ったときなども特別な配慮はいりません。

紹介したガイドラインは、B型肝炎ウイルスに対して作成されたものです。 B型に比べて感染力の弱いC型(感染力はB型の1000分の1~1万分の1)の場合は、B型に準じた注意をすることで十分です。 また、B型肝炎ウイルス(HBs抗原)が陽性でも、HBe抗体陽性の場合はHBe抗原陽性の場合に比べて、感染力は弱いのです。

感染予防のポイント3

正しい知識を持って豊かな生活を

肝炎ウイルスに感染していることに引け目を感じ、社会に知られたくないと気遣っている患者さんは多いものです。 しかし、肝炎ウイルスの感染経路や予防法についての正しい知識を持てば、むやみに隠したり恐れる必要はありません。

日常的な人付き合いで、肝炎ウイルスキャリアであることを告知すべきかどうかもケースバイケースで考えるとよいでしょう。 職場など、感染する機会がほとんどない場所では、あえて周囲に告げる必要もないでしょう。 親しい友人であれば、肝臓病のことを知らせ、相手に正しい知識を持ってもらってもよいでしょう。 そうすれば、感染予防の正しい知識が社会に広がることにもなります。

ただ、病院や歯科で治療・検査を受けるときは、感染していることを医療関係者に必ず告げてください。 感染に対する十分な注意がない場合、医療関係者や他の患者さんにも感染が広がる恐れがあるからです。 医療者側は感染予防の対策をしっかりすれば問題ないことをよく知っていますから、患者さんがウイルス感染を告げることによる差別が起きることはないでしょう。

参考資料:
『肝臓病生活指導テキスト』 慶應義塾大学講師 加藤眞三 著
『透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防マニュアル』
厚生省厚生科学特別研究事業「透析医療における感染症の実態把握と予防対策に関する研究班」
『B型肝炎医療機関内感染対策ガイドライン』 厚生省肝炎連絡協議会B型肝炎研究班編