総コレステロール、コリンエステラーゼ(ChE)、乳酸脱水素酵素(LDH)

肝臓は人体の化学工場といわれるように、からだにとって大切ないろいろなたんぱく質や脂質、酵素などをつくっています。

総コレステロール

高脂血症や動脈硬化の指標としてよく知られていますが、肝機能の指標でもあります。血清コレステロールは、その約90%が肝臓で合成されます。

したがって、慢性肝炎や肝硬変などにより肝機能が低下すると、総コレステロールの合成能力が低下して、血清総コレステロールが低下します。

また、胆石などにより胆汁の流れが障害される(胆汁うっ滞)と、胆汁中のコレステロールが体外に排出されなくなり、血液中の総コレステロールは上昇します。

黄疸の原因には、肝臓に障害がある場合と、胆汁うっ滞による場合があるので、黄疸のある患者さんの総コレステロールを調べることにより、どちらの原因によるものかが判断できます。

コリンエステラーゼ(ChE)

肝臓や血液中に存在し、アセチルコリンなどのコリンエステルと呼ばれる物質を分解する働きをしている酵素です。

ChEは肝臓で合成されて血液中に流れていくため、血清中のChEの値により、肝実質細胞の機能がわかります。ChEが低いときは、血清アルブミンも低い値を示すことが知られており、肝臓でのたんぱく合成能の指標として用いられます。

乳酸脱水素酵素(LDH)

糖分を分解してエネルギーを作る、解糖系という代謝経路に関わっている酵素で、正常な方では、血液中にはごく微量しか含まれません。

急性肝炎が起こって肝細胞が壊れると、肝細胞から血液中に多量のLDHが流れ出るため、血液中のLDH値が上昇します。

LDHは体内に広く分布し、肝臓以外にも腎臓、心筋、骨格筋、赤血球、がん細胞に多く含まれます。

肝臓の障害だけではなく、各臓器の障害や悪性腫瘍、また運動などによっても上昇するため、たとえ血液中のLDHが上昇していても、肝臓に障害があるとは限りません。

あくまでも、肝臓に異常がある可能性があるかどうかをチェックするための検査で、ほかの検査と組み合わせて、総合的に判断する必要があります。

基準値(正常値)と、基準値外(異常値)の場合に疑われる病気

項目 基準値 疑われる病気
総コレステロール 120~220 mg/dL 高値:閉塞性黄疸肝細胞がんなど
低値:急性肝炎肝硬変劇症肝炎など
ChE 100~240 IU/L 低値:慢性肝炎、肝硬変、肝がんなど
LDH 120~240 IU/L 高値:急性肝炎、重症肝炎、転移性肝がん、EBウイルス肝炎、白血球の肝浸潤など