患者力1

自己管理ができる

あなたの体の管理者は誰ですか? こんな質問に対して、「はい。私自身です」と自信をもって答えることができますか?

自分の健康を維持したり、病気を治療する方法を選択することは、命あるものにとって大変重要な問題です。 これほど重要な問題を、本来は他人任せになどできないはずです。 しかし現代では、医療の発展にともない、自分の体をほとんど医師任せにしてしまう傾向が強くなっていることは否めません。

短期間で治癒できる急性病の場合であれば、医師任せでも良いのでしょうが、慢性病など治療期間が長い病気では、患者さんによる自己管理が重要になってきます。 乱れた生活習慣が病気を誘引していたり、生活習慣の改善が必要な病気であればなおさら、治癒の方向に向かえるかどうかは患者さん自身の力にかかっているからです。 医師や薬に頼るだけではなく、まず自分で自分の体を管理できることが何より大切です。

さらに、自分が今どんな症状で、毎日の生活習慣の改善と治療でどこまで回復が可能なのかを把握していることも重要です。 そうすることで、自己管理における達成目標も、無理のない現実的なものとなります。 無理のない目標が決まれば、患者さん自身がどのような治療を受けたいか、どのような人生を送りたいかというビジョンもはっきりしてくるでしょう。

患者力2

知りたい情報を得る

患者さんは、自分の病気についての知識がないほど不安になるものです。 診察の時間内では、医師から聞き出せる情報には限界があります。 そこで患者さんは、自分で情報収集を始めます。現代は情報化社会ですから、インターネットや書籍、マスコミ報道など、手軽に入手できる情報であふれています。 勉強熱心な患者さんでは、自分の病気に関してなら主治医よりも新しい専門知識を持っていることさえあります。

しかし、情報量が多くなればなるほど、必要な情報の取捨選択は難しくなります。 特にインターネットで閲覧できる情報は、情報の信頼性がはっきりしないケースが多いものです。 ホームページの医療情報は、どのような機関がどのような目的で出しているものなのかを吟味する必要があるでしょう。

また、インターネットで得る知識は、どうしても断片的になります。一つの病気についてじっくり調べたい場合は、書籍を読む方がよいでしょう。 本屋さん、図書館には簡単なものから詳しいものまでありますので、自分にあったものを選ぶとよいでしょう。 信頼できる医者の書いた啓蒙書もお奨めできますし、もう少しベテランの患者さんには看護師向けの教科書が奨められます。 医師向けのものに比べて生活に直結する知識が多く含まれているし、安価で理解しやすいのが特徴です。

医療情報に接する場合、一つ心得ておきたいことがあります。 それは、医療情報は常に変化しているということです。医療の発展は日進月歩です。 今日の常識が明日の非常識となることも少なからずあります。どの時点での情報であるかをよく吟味しましょう。 また、特にインターネットなどの情報では、情報を鵜呑みにするのではなく、慎重な態度で接することも、これからの時代には必要とされることでしょう。

患者力3

コミュニケーションを豊かにする

最後に紹介する患者力は、コミュニケーション能力です。対話のない情報収集には限界があります。 自分の病状について知るための基本は、やはり主治医とのコミュニケーションです。

インフォームドコンセント

インフォームドコンセントは、「十分な説明を受けた上での、患者による自発的な同意あるいは決定」と説明されます。 米国から来た考え方であり、日本の医療にはそぐわないという意見もあります。 確かに、患者さんが治療法に関して精通し、全てを自己決定していくという解釈であれば、それを重荷に感じる人は日本では多いでしょう。

しかし、患者さんがインフォームドコンセントによって本来目指すべきものは、「自分の価値観に見合う医療や治療法にめぐり合うこと」です。 そうであれば、患者さんが自分の価値観や人生観、希望を医師に伝え、医師はその希望に沿った治療が可能となる方法を考え、お互いに話し合うことにより治療法を決定することができるはずです。 患者さんは治療法を詳しく知るというよりは、「自分はどのように治療し、どのように生きていきたいか」というビジョンをはっきり持ち、医師とのコミュニケーションを円滑にすることにより、自分にあった医療に出会うことができるでしょう。

診察室での医師との関係以外にも、コミュニケーションの場はあります。 患者さん同士で情報の交換や共有ができる集まりに参加してみるのもいいでしょう。

患者会

患者会とは、同じ病気をもつ患者さんが集まって結成された組織です。 組織によって形態は様々ですが、定期的に勉強会や交流会を開き、患者さん同士の情報交換や交流が活発に行われています。 日常生活の中でのちょっとした不便だとか、生活の工夫の仕方など、患者さん同士だからこそ共感できる話題も多く、得るものは多いはずです。 また、自宅にひきこもりがちな方は、たまに外出して同じ悩みを持つ仲間と話をするだけで、気分が晴れやかになるものです。

患者さんが利用できる助成制度などの知識もそこで得られることは多いのです。

日本各地には様々な患者会があります。お住まいの地域から参加可能な患者会を探し、ぜひ参加されてはいかがでしょうか?

肝臓病教室

肝臓病教室は、この暮らしのミニ情報の監修者である慶應義塾大学看護医療学部教授の加藤眞三先生が始めたグループワーク型の勉強会です。 診察時間内では、肝臓病について詳しい説明ができないので、患者さんを集めて勉強会を開こうというアイディアから始まりました。

肝臓病教室の実際は、前半に医師や栄養士による講義、後半は患者さん同士の交流を含めたグループレッスンといったプログラムが一般的です。

肝臓病教室は1992年から実施され、今では日本全国の100以上の病院で実施されています。

参考資料:
『患者の生き方』 加藤眞三著 春秋社
『教育と医学』 加藤眞三先生 プリント資料

肝臓病教室:
http://melit.jp/liver/index.html